旅の悦楽
僕にとって旅とは悦楽だ。通信機器、移動手段が著しく発達した現代において、もう旅なんて呼び方は大げさなのかもしれない。それでも金泉寺や仁摩で出会ったおじさん達、長岳寺で僕の足元から離れようとしなかった野良猫、桜島フェリーの上で、少女と交わした視線。彼らと共有した時間は僕だけのものだ。もしかしたら誰が一度物語を完結させたのかもしれないその場所で、再び僕らが繰り広げるそれそのものが、僕にとっての「旅の悦楽」なのであります。

そんなこんなで結局、もう一度PENを買い戻したのですが、同じものではつまらないと、毎日ネット上でカメラ屋パトロール。PENの相場は以前より下がっていますが、その分、程度の良いものにはなかなか巡り会えずに苦労しました。3か月程粘った甲斐があって、予想以上に程度の良いPENを手にすることが出来ました。
今回僕が手に入れたのは1963年から製造開始となったPENの最初期モデル、「F」。
Fには、PENの開発者、米谷美久さんがデザインした特徴的な花形マークがボディ前面に描かれており、これだけで所有感が増します。以前所有していた後継機種「FT」には無かったものでした。
またFTのファインダーは見にくいマイクロスプリットである上に、ファインダー内に露出のガイドナンバーが表示されていて、とてもわずらわしかったのですが、Fは元々露出計が無く、全面マット式なのでファインダーがすっきりしています。
もうずっとEVFしか見ていなかったので、久々に見るOVFのクリアなファインダーにはうっとりしてしまいます。マニュアルカメラは、やはりファインダーが命ですね。
そしてダブルストロークという嬉しい(?)誤算付き。ダブルストロークのカメラなんて、映画「ゆれる」でオダジョーが手にしていたM3しか見た事なかったので、テンションが上がりました。
ただ、残念な事にレンズがないので(笑)、FTを売却した時に、一緒に処分し忘れたまま残っていたアダプターを使ってニッコールレンズを装着しています。
はい、もう変態の域に達してますね、僕。でもいいんです。
I ♡ PEN。米谷さん、素晴らしいカメラをありがとう。もう離さない(笑)

僕が思うPENの良さは、普通にカメラを構えてファインダーを覗くと、常に縦構図であるという事です。前回記述したようにハーフカメラは1コマ横35mm×縦24mmを縦に分割し横17mm×縦24mmとする事で自然と縦構図となってしまうのです。常に3:2のアスペクト比で横長構図に慣れてきた目にとって、これはとても新鮮でした。
横構図=客観的構図、縦構図=主観的構図と言われていますが、普段見慣れている横構図では左右に広がりがある為、情報量を多く取り込こんで主題を演出できる反面、色々なものが写りこんで、主題がはっきりさせられなかったり、写り込む情報を上手く整理できなかったりしてなかなかシャッターが切れない事があります。
PENのファインダーをのぞく時は常に縦構図=主観的構図となります。建物などを撮っていても、その全容を写し込むこ事は出来ないのですが、「この建物の、特にここを写したい。」という自らの視点を整理して、自然とその1枚に盛り込むことが出来ます。あまり多くの情報を取り込まないので、主題が決めやすくなります。そこに付与されるPENの操作感。
心地よいシャッター音。
一度シャッターを切る度にフィルムを巻き上げる所作。
さらに生まれる高揚感。
ツボにはまるとあっという間にフィルムカウンターがどんどん進んでいきます。例えるなら、格闘ゲームでコンボがバンバン決まったあの感じ。ある種の快感でもあるのです。
あとは1コマ1コマにつながる偶発的ストーリー。

たとえばこの1枚。
桜の時期、長男とサイクリングに出かけたのですが、ブランコに落ちていた桜の花びらと、桜の下、一生懸命にブランコをこぐ長男の一コマが偶然並んで、2コマで1枚の超お気に入り写真が生まれました。現像から上がってきたネガを見た時に思わず感嘆の声が漏れてしまいました。
PENを使う時にはこの1コマ1コマの並び方にも期待を寄せてしまいます。

昨年、沢山持っていたフィルムカメラをそれぞれ売却して整理したのだけど、その中で唯一手放した事を後悔したカメラがPEN。
PENについて少し説明しておくと、PENは1959年代に35mmフィルム1コマで2枚撮れるいわゆるハーフカメラ(フルサイズは横35mm×縦24mm、ハーフはその半分で横17mm×縦24mm)としてオリンパスから発売されたものです。PENシリーズはレンズ固定式を含めると種類は沢山ありますが、レンズ交換式のPENは、F、FT、FVの3種類のみです。この3種類の違いは内蔵露出計、セルフタイマーの有無です。
ハーフカメラというどこか軽い雰囲気に受け取られがちですが、PENの金属製ボディは手に取ると、ビックリするほどにずしりとした重みがあります。凹凸が少なくよくまとまったデザインは秀逸で、当時のフルサイズ一眼レフに負けない質感の高さが伺えます。
今現在、発売されているデジタルPEN-Fもこのデザインを踏襲しており人気を博していますが、液晶画面やファンクションボタン、モードボタンなど、ごてごてしたものがついていない(つける必要がなかった)フィルムPENの方がすっきりして好感が持てます。この質感は、今のカメラではなかなか味わえないものであると思います。
が、手放した事を後悔したのはこれが理由ではありません。もちろん1コマで2枚撮れるというハーフカメラのお得感でもありません。(デジタルなら何枚でも撮れる時代ですしね。)
長くなりそうなんで、次に続きます。

車を半年点検に出したのだが、タイヤを固定しているボルトとねじが噛み合わないまま固定していて、舐めてしまっている事が発覚。部品交換に14000円の修理代がかかってしまった。
12月のあたまに自分で冬用タイヤに交換したのだが、その時に急に雨が降り出したので、焦ってやってしまったことが原因かな、と。脱輪しなくて良かった・・・。
OLYMPUS PEN-F×Ai Nikkor50mmF1.2S Kodak ProFotoXL

初めて歩いた西陣エリア。面白そうなお店があったり、僕の大好きな路地裏風景があったりで、なかなかフォトジェニックなエリアだった。
1月から2月初旬まで、少ない休日を利用してあちこち撮り歩きに出かけたが、いつのまにかスマホの歩数計は50kmを超えていた。
OLYMPUS PEN-F×Ai Nikkor50mmF1.2S Kodak ProFotoXL100