旅とカメラとオートバイと

旅の悦楽

僕にとって旅とは悦楽だ。通信機器、移動手段が著しく発達した現代において、もう旅なんて呼び方は大げさなのかもしれない。それでも金泉寺や仁摩で出会ったおじさん達、長岳寺で僕の足元から離れようとしなかった野良猫、桜島フェリーの上で、少女と交わした視線。彼らと共有した時間は僕だけのものだ。もしかしたら誰が一度物語を完結させたのかもしれないその場所で、再び僕らが繰り広げるそれそのものが、僕にとっての「旅の悦楽」なのであります。

多賀の住友鉱山跡に行っていました。その1

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SONY RX100M4
2017.5

多賀の住友鉱山跡に行っていました。その2

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地図は滋賀県の名神彦根インター東側にあたる多賀地区北部の山岳地帯です。
このあたりは過疎化が進み、近年問題になっている超限界集落なのですが、一部のマニアの間では有名な廃村が多数みられる地区でもあります。

僕も昨年この廃村を何カ所か訪れ、記事におこしましたが、ここにはもう一つ、その筋のマニアにはたまらない場所があります。

写真中央に見られる空き地、なんだと思いますか?

これはイワスという山の山頂にある空き地で、実は住友大阪セメント鉱山として昭和11年から40年まで稼働していた鉱山跡なのです。
近辺のオートバイで走れる林道を検索していたら、たまたまこの鉱山跡へと続く林道の情報がヒットしました。
「こんな山奥どうやって行くのよ?」って疑っていたら、地図をズームさせるとちゃんと鉱山へと続く道が見えてくるんですよ。(今更ながら航空写真ってすごいですよね。)

参考にさせて頂いたいくつかのブログによると、その林道はオートバイで行くにはかなりハードな様子で、人によっては途中で諦めたり、オートバイを置いて徒歩で山頂を目指した方もいらっしゃるようでした。

それらを踏まえて、今回はカブで行く事にしました。

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林道 滝谷武奈~米原 線(舗装路)に進み、目印のアンテナ線のついた電信柱から林道へと外れていきます。

ネットでは何度も確認していましたが、あまりの素っ気なさに「ホントにここであってんだろうな。」と半信半疑で林道に突入していきます。
最初は走りやすい穏やかな感じの路面でしたが・・・。

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すぐに道はガレはじめ、倒木が道をふさぎ始めました。
殆どの倒木は、スリムなカブのおかげで路肩をすり抜けられましたが、この倒木だけは道一杯に塞いでいました。
路肩の幅は30cmあったかなかったか・・・。
右は崖になっているので、少しでもバランスを崩そうものなら崖下へ転落しそうでした。
先ずは倒木を押してみましたが、びくともせず。
強者のダートライダーなら、こういう時の為にのこぎりを持参しているのですが、僕は持っていなかったので、慎重にその30cmの路肩をそろ~りとすり抜けました。フロントカウルやスッテプが倒木の端に引っかかって体勢が不安定になるたび、ヒヤヒヤしました。

ようやく難関をクリアし、「カブで良かった、250ccとかならたぶん無理だぜ・・・。」と安堵のため息をもらしたのもつかの間・・・。

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途中から勾配がきつくなって、路面はふかふかの盛り土に大きな石がごろごろと転がっていました。
カブに乗ったままここを駆けあがる腕は僕にはないので、カブを降りて横に立ち一速に入れたまま、アクセルを開けたり閉めたりしながらカブと二人三脚で慎重にガレ場を超えていきました。

石に毛躓いてカブもろとも転倒したり、タイヤが空転してスタックしたりと、状況は悲惨を極めました。
それでもカブってすごいんですよね、90ccの非力なエンジンでノーマルタイヤなのに、しっかりと登ってくれるんです。
転倒しても軽いから片腕で引き起こせるし。

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そんなこんなで、汗だくになりながら、なんとか鉱山のある頂上に到達。
ゲートに掲げられた警告板にビビりながらもその中に入っていきました。


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OLYMPUS OM-D EM-1/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO

2017.5

多賀の住友鉱山跡に行っていました。その3

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構内に入るとまず目を惹くのがゴツゴツした山肌です。
砕石によるものですが、荒涼とした風景が広がっています。まるで子供の頃によく見た戦隊物の爆発シーンに使われそうな景色ですよね。

広い構内を、僕はスティーブ・マックイーンの大脱走をイメージしながら、縦横無尽にカブを走らせました。
勿論カブはトライアンフのつもりですよ(笑)

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その後はカブをおいて周囲を散策。
構内にはサイロやベルトコンベア、破砕に使用したであろう大きなミルなど、いくつかの遺構が残っています。
洞穴のような真っ暗な貯鉱スペースは少し気味が悪かったです。

一通り見学した後、そろそろ下山しようと思いカブに跨り、アクセルを開けますが、一向にカブは前に進みません。
最初は後輪がスタックしているのかと思い、両足を踏ん張りながらアクセルを更にあけ、後輪をくぼみから押し出すよう試みます。
ですが、やはりカブは前に進みません。

おかしいなとカブを降りて、自力で前に押し出しますが、やはりカブは前に進まず、なんだか妙な抵抗すら感じるのです。
よく観察してみると、なんと前輪のフェンダーとタイヤの間に木の枝が挟まっているではありませんか!
こいつがタイヤの回転を邪魔しているようです。

手で木の枝を押し出そうとしましたが、木の枝はぴったりと挟まっていて取れません。その辺の木の枝や石で叩いてみましたがびくともせず。生憎車載工具は無く、どうにもなりません。
やけくそにカブを押しても引いてもやはり動きません。

この時点で冷や汗が流れます。こんな山奥の廃鉱山に誰もやってくる筈もなく、助けを求める事は出来ません。
カブを置いて一旦下山しても、車が進入できる場所ではないですからレッカーは不可能です。

どうしようどうしよう・・・。林道を走るのに何の装備もしてこなかった自分の準備不足を後悔しました。

半ば泣きべそをかきながら、先ほどの林道を徒歩で下り始めたのですが、こんなところにカブを置いていくのが嫌だったので駆け足で戻ります。

「取れないならあの木自体を砕けばいいんだ。」そう考えて先ほどの作業小屋後に入り、何か使えるものはないか探します。
見つけたのは小屋の骨組みであっただろう錆びついた鉄の杭と、小さな釘。

とりあえず杭で木の枝を突きまくって砕ければよし。ダメなら前輪を釘でパンクさせて枝を抜き取る。
後はカブを押して下山するのみ。

憎き木の枝に錆びた鉄の杭を打ち込みます。錆びた杭は少し曲がりますが、木の枝に亀裂が入りました。
そこからはもう、必死になってひたすら杭を木の枝に打ち込みました。
木の枝は少しずつ削れましたが、なかなか砕けず手で抜き取ることもできませんでした。

1時間くらい同じ作業を繰り返した頃、木の枝が削れて隙間ができた為、タイヤが少し動き始めました。
そこからはダメもとでエンジンをかけ、一速でタイヤを少し回してみました。
すると、ゆっくりながらタイヤは回り始めました。

「勝機!」とばかりに僕はカブに跨り、アクセルスロットルを勢いよくひねりました。
回り始めたタイヤの勢いに憎き木の枝は凄まじい勢いで押し出され、「パカーン!」と大きな音を立てて、飛び散りました。

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「諦めなくてよかった・・・。」
安心すると、急に力が抜けてしまい、しばらくその場にへたり込んでしまいました。
カブも「こんな山奥に一人残されなくて良かった。」と安心していたでしょう。(笑)


SONY RX100M4
OLYMPUS OM-D EM-1/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO

2017.5

多賀の住友鉱山跡に行っていました。その4

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#3995

実は最近、林道走行にも興味が出てきて250ccのオフロードバイクを物色していたのですが、今回の住友鉱山跡に続く林道を走って、カブの走破性の高さにビックリして、オフロードバイクは必要ないなと思いました。

パワーはありませんが走れない事はありません。軽いので乗ってクリアできない場所は押せばいいし。
ある意味最強のトレールバイクだなと思いました。

とりあえず、車載工具を買い足すのと、もう少し林道使用にいじってみようかなと思っているところです。

最後に、you tubeで見つけた住友鉱山跡の動画を貼り付けておきます。


多賀の住友鉱山跡に行ってきました。(了)




SONY RX100M4
2017.5