伊勢志摩に行ってきました。その1
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紅葉シーズン真っ盛りの時期に、それとは縁遠い、伊勢湾に僕はいた。
その日は朝からよく晴れて、雲一つない快晴だった。初めて訪れた伊射波神社は静かな漁村を抜け、その先のつづら折れの山道を一つ越えた先にあった。鳥居の前には穏やかな伊勢湾が広がっていて、陽が沈んだ後の水面は綺麗な紫に染まった。マジックアワーというやつで、僕は一日のうちの、この時間が一番好きだ。良い事があった日は、その気分を更に高揚させてくれるし、嫌な事があった日でも、それ自体どうでもいいことのように思えるからだ。
仕事は目が回るほどに忙しく、辞めていく同僚も後を絶たない。それほどにストレスフルだ。共働きの嫁さんとは家事と育児を巡っていつもケンカばかりだし、疲労は溜まる一方だ。やるべき事だけで精一杯、やりたい事は後回し。そんな毎日だけど、なんとか時間を作ってはオートバイを走らせて、海まで行く。海が見たかったから。ただそれだけの理由で片道150mlの道程を延々とやってきた。
伊射波神社の海辺は濁りのない乾いた空の紫に、少しずつ飲み込まれていく。そうして空と海の境界線が不明瞭になり、夜の帳が落ちていくまでの時間は、ため息が出る程美しかった。
静寂の中にある穏やかな波の音さえも。