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誰にも出会わない旅(3)

#5858


 大人とは侘しいものだ。愛し合っていても、用心して、他人行儀を守らなければならぬ。
 なぜ用心深くしなければならぬのだろう。
 その答えは、何でもない。
 見事に裏切られて、赤恥をかいた事が多すぎたからである。
 人はあてにはならないという発見は、青年の大人に移行する第一課である。
 大人とは、裏切られた青年の姿である。

 太宰治 津軽 抄


RICOH GXR×Voigtländer NOKTON Classic35mmF1.4

ずっとオートバイ。

#5860

 夜の中央道で、100km以上に及ぶ長い意地の張り合いの末、僕のオートバイを置き去りにしたオートバイ。
 あれから20年近くがたち、いつの間にか僕もそのオートバイを手に入れていた。

 あの夜、遠ざかっていくテールランプを見ながら抱いたイメージとは裏腹に、遅いし止まらないし、すぐ壊れる。
 
 でもなんだろな。
 こいつに乗れば乗るほど僕は、僕が18の頃に思い描いたオートバイ乗りに近づいていく気がするんだ。



SONY DSC-RX100M4

ぶらり、お散歩ツーリングその1

#5863
#5861
#5862


 暖かくなると、眠っていたオートバイの虫が騒ぎ出す。

 冬の空気はカラッとしていて軽い。
 冬は空気の体積も小さく、キャブに流れ込む空気も抵抗がないのかアクセルも軽く吹けて気持ちがいい。
 
 暖かいといっても、オートバイをスピードに乗せていくと、どんどん風は冷たくなって、指先がかじかむ。
 自販機を見つけて、停車。
 オートバイの傍らで飲むホットの缶コーヒーは、絶品。

 ああ、今日も幸せだ。



SONY DSC-RX100M4

ぶらり、お散歩ツーリングその4

#5870
#5871
#5872
月ヶ瀬村

 室生湖を後にして、またぶらぶら。

 いつだったか、大雨に降られて地図を濡らしてしまった。そのまま忘れて放置したものだから、使い物にならなくなって、僕は今、地図を持っていない。今までの記憶を頼りにあちらこちらと適当に走るものだから、時々迷う。

 「予定されたルートに沿って、間違いなく走行する。」という緊張感は、もはや持ってはいない。
 昨日、今日のオートバイ乗りではないのだ、もっと自由でいい。そもそもオートバイとはそういう乗り物なのだから。

 何となく走って気になる標識や枝道を見つけては、オートバイで分け入ってみる。
 この日も田園地帯のあぜ道から林道へと分け入って、沢山の浮石や折れた枝が散乱する廃道を進むと、やがて月ヶ瀬へと抜けた。

 月ヶ瀬では梅の花がちらほら咲いていた。可愛い梅の花びら越しの透過光は柔らかいピンク色。
 この時期、よく晴れた冬の午後から薄暮へと差し掛かる手前の数時間は、本当に特別な時間で、背中を温める日差しは淡く、澄んだ空気の中にはもう、春の息吹を感じさせるにおいを含んでいる。

 それを全身で感じる。
 オートバイの上では誰にも邪魔されない。
 なんと贅沢で幸せな時間である事か。

 寄り道は小さな発見の連続で、時に大きな喜びへと変わる。



OLYMPUS OM-D EM-1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mmF2.8 PRO