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旅とカメラとオートバイと(9)

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 オートバイは力強いエンジンによって、むき出しのまま季節の中に放り出されてしまう。鼻孔をくすぐる草木の心地よい薫りが漂う春の中へ。頭上から降り注ぐ突き刺さるような日差しと、焼けつくようなアスファルトの照り返しが待つ夏の路上へ。稲の刈り入れが終わった後の田んぼに漂うすこし焦げたような匂い、どの季節よりも眩しく、それでいて少し哀愁の漂う印象的な光を放つ夕日が見られる秋の郷愁へ。気持ちが引き締まる様な澄んだ空気が、身を切る様に冷たく感じる厳しい冬の風の中へ。
 勿論ヘルメットやライダース、ブーツなんかを身に着けているが、それらはアクシデントに対して何らかの役割を果たしても、むき出しの季節の中ではコンドームほどにも遮ることはできない。四季を通してオートバイと走った時間だけ、オートバイ海苔の肌は季節を知る事になる。それこそが旅そのものなのだと強く感じることが出来る。

 旅は独りがいい。そして旅の手段がオートバイなら、その旅は出来すぎちゃって鼻で笑ってしまうくらい最高だ。いつも僕を運んでくれるだけで、嬉しい時や感動した時は勿論、辛い時や悲しい時も何も応えてはくれないけれど、必ず傍にあるオートバイ。見晴らしの良い山の駐車場で。海水浴の客でにぎわう夏の海辺で。街灯のない真っ暗な田舎の雑貨屋前にあった、心細い光を放つ自販機の傍で。身の危険すら感じる豪雨に耐えられず、逃げ込んだバス亭の前で。僕がスタンドを立てた場所でいつまでも立っている。その無口な相棒をしげしげと見つめながら、時々心強く感じるのだ。

 「どこに向かって進めばいいのかわからないけれど、僕はまだ、どこへでも行けるのだ」と。

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