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旅とカメラとオートバイと

旅の悦楽

僕にとって旅とは悦楽だ。通信機器、移動手段が著しく発達した現代において、もう旅なんて呼び方は大げさなのかもしれない。それでも金泉寺や仁摩で出会ったおじさん達、長岳寺で僕の足元から離れようとしなかった野良猫、桜島フェリーの上で、少女と交わした視線。彼らと共有した時間は僕だけのものだ。もしかしたら誰が一度物語を完結させたのかもしれないその場所で、再び僕らが繰り広げるそれそのものが、僕にとっての「旅の悦楽」なのであります。

信楽(10)

Posted by yasu1995 on   0 comments   0 trackback

#2319

信楽(10)

雨が降ってきました。
寂れた商店街の個人商店で缶コーヒーを買って、軒下に備え付けられたベンチで一服。

向かいの食堂もまた、周りと同じように寂れた表情の店構えで、その色あせた写真のようにくもった窓から、暇そうにTVを見ながらあくびをしているおばぁちゃんの姿が見えました。

なかなか雨はやまないので、もう一本煙草に火をつけると、商店街の薄暗い路地の向こうに掲げられた提灯の束が見え、その下を子供たちが小走りに走っていくのが見えました。

僕は折りたたみ傘をさして、その路地に誘われるように入っていきました。
路地を抜けると、三叉路の真ん中に立派な櫓に安置されたお地蔵さんがありました。その前には公園があって、その公園を取り囲むように提灯がぶら下げられていました。公園内に張られたテントの下で大人や子供たちが、たくさんの食べ物や飲み物をつまみながら賑わっていました。

「ああ、地蔵盆か。」

僕も郷里でも同じように大人子供が集まって、賑やかだった地蔵盆を思い出して、ノスタルジックな気持ちになりました。

相変わらず雨は止みません。

駐車場に停めたカブに乗って帰路につきます。レインウェアのおかげで、衣服は濡れませんが、カブの上を流れる風はひんやりとして肌寒く感じます。信楽の街を抜けると田園風景が広がります。雨粒のついたシールドから飛び込んできたのは小麦色の風景。
7月末に東北の穀倉地帯を走った時の田んぼの稲は、青々として空に向かって真っ直ぐ伸びていたのに、いつの間にか身を付けて重そうに首を垂れ、黄金色へと変わっていました。

季節はもう夏から秋へと移り変わっているのを直に感じました。

暦の上では夏と秋の境目ははっきりしていますが、実際にそんな境界線はありませんし、日々の生活の中でそれを感じる機会も、なかなかありません。ですが非日常的なオートバイでの旅は、それを強く感じる事ができるのです。

「車窓を眺めながらのんびり行く電車の旅もいいですが、暑い、寒いのオートバイの旅も悪くありませんよ、水丸さん。」

そんなことを思いながら信楽を後にしました。

信楽(了)


RICOH GXR/50ミリ
2014.8

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