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夜の採水所で

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奈良を旅した時の話。

夜、山間の集落にある温泉で汗を流して、テントを張ったキャンプ場に帰る途中、美味しいコーヒーを飲むために日本百名水の採水所に立ち寄った。そこで、この近所に住んでいるというおじさんに出会い、なぜか家に招かれることになった。

家にはおじさんの他に誰もなく、僕は静かな部屋の真ん中に置かれたテーブルに座って、おじさんの入れたインスタントコーヒーをすすり始める。と、おじさんは僕に声かけて来た時と同じ調子で、賑やかに話し始めた。

おじさんは水晶収集を趣味にしていて、水晶を求めて全国を回って歩いた時のこと。
その地方の名水巡りをしていて、時には道しるべもなく登山道もない山の中を分け入って、水源を探し当てたときのこと。

「山に一人で入って怖くないのか。」と僕が問うとおじさんは、「生まれは白山でマタギのような生活をしていたから、慣れている。」と笑った。

「北海道でとある山に登った時なんか、おれぁ、登山道とか嫌いだから、藪漕ぎで道のないとこ歩くだろ?すると、俺の歩いた後に道筋ができるわけよ。で、頂上まで行って、さぁ帰るかと元来た道を歩くと、俺の足跡のほかに、もう一個、足跡がついてんだ。それぁ大きい足あとでよ、それ見てピンと来たんだ。ずっと俺の後をついてきてたんだってよ。で、その足跡の先に目をやると・・・、やっぱりいたんだよ、クマが。」

「まじっすか、で?で?」といつの間にか話に引き込まれていた僕。

「でも何もねぇよ。目を見ないで、ゆ~っくり歩いていくとな、向こうもゆ~っくりこっちに向かって歩いてくるからさ、肩が触れるか触れないか程度の距離ですれ違って、おしまいだ。白山とかはクマの生息地だからよ、こんなのよくあることだよ。」とおじさんは豪快に笑った。

おじさんはまだまだ話したそうだったが、僕はまだ夕飯も食べていなかったし、テント内の荷物も気になったので、タイミングを見計らって、その場を後にした。

真っ暗なキャンプ場は貸切状態で、僕は水筒に組んだ名水を使ってご飯を炊き、簡単なおかずを作って、最後にまた名水で淹れたコーヒーをすすった。コーヒーを飲みながら、他にやることも無いのでおじさんの話を、何となく思い出していた。

翌朝。キャンプ場からおじさんの自宅前を通ると、おじさんの家の窓から今度はおばさんが顔をだした。

「昨日、キャンプ場に泊まったのはあんたかい?昨日はうちのおっさんが悪かったねぇ、うるさいほどよく喋ってただろ?ホント、暇なおっさんでねぇ。」と笑った。

「なんだ、奥さんいたのか。」と思いながら、珈琲を頂いた礼を言った。

おじさんの話の中に、非常に興味のそそられる話があった。この近くに「毒水」と呼ばれる水源があって、その毒水は、名前と裏腹にとても美味しい水なんだそうだ。

水源にたどり着くまで、道なき道を登っていかなければならないらしいが、目印を教えていただいたので、今度、行ってみようかと思っている。

こんな風に、旅の中で、また次の目的地が決まるのは、とても楽しい。



RICOH GXR+Tamron SP AF 17-35mmF2-4
Ai AF Zoom Nikkor70-300mF4-5.6(D)
GR Lens A12 50mmF2.5
奈良・2013.9

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