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旅とカメラとオートバイと

旅の悦楽

僕にとって旅とは悦楽だ。通信機器、移動手段が著しく発達した現代において、もう旅なんて呼び方は大げさなのかもしれない。それでも金泉寺や仁摩で出会ったおじさん達、長岳寺で僕の足元から離れようとしなかった野良猫、桜島フェリーの上で、少女と交わした視線。彼らと共有した時間は僕だけのものだ。もしかしたら誰が一度物語を完結させたのかもしれないその場所で、再び僕らが繰り広げるそれそのものが、僕にとっての「旅の悦楽」なのであります。

吹屋(3)

Posted by yasu1995 on   0 comments   0 trackback

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 11月下旬。岡山の砂川公園キャンプ場で今年最後のキャンプをした。キャンプ場の管理人さんが「今夜は冷えるよ。」と言ったように、その夜の気温は多分0度近くまで下がったと思う。二重にした寝袋にくるまれていてもなお、背中がひんやりと冷たく感じ、その度に寝返りを打った。

 翌朝、霜でぬれたテントを適当にたたんで、その他もろもろのキャンプ道具もグチャグチャに車のトランクルームに放り込むと早々にキャンプ場を後にした。オートバイだと何をどこにどう詰めるか、どう載せるかを考えてしっかりパッキングしないと荷崩れをおこすけれど、広い収納力を誇る車なら関係なしだ。冷えた体もエアコンですぐに温まるから、オートバイでのキャンプに比べたらイージーで快適だった。

 前日はよく晴れて鬼之城から岡山市内とその向こうに瀬戸内海を見渡せたのだけど、翌日は昼前から雨。岡山から米子を結ぶ国道180号線を北上し、途中の県道85号線から吹屋へと走る。カーナビがグネグネと描くルートが示すようにカーブが連続した山道で、道幅も狭い。途中にいくつかの集落を走り抜けたが、悪天候のせいか人影は見当たらず、まるで全てが廃屋のようだった。雨霧に包まれた視界の悪い山道を走ると、心細さを感じた。そんな山道を延々と走り続け、カーナビの示す地図すら疑いたくなる頃にようやく到着できる。吹屋はそんな山深い秘境のような場所にある。

 吹屋はかつてベンガラ(銅山で採れる硫化鉄鉱を原材料とした赤色顔料。防錆防腐効果がある。)の産地として、栄華を誇っていた集落だ。その景観は独特で、その特産物であるベンガラを建物の外壁に利用している他、瓦には石州瓦(赤銅色の粘土瓦)を利用している為、集落全体が赤に染まっている。また、目抜き通りの両脇に軒を連ねる家屋には統一感があって、すっきりしている。集落を散策してみると、その先進的な思想を実感できる。

 雨宿りのつもりで入った郷土館。、その郷土館である旧片山邸は吹屋の豪商で、この広大な敷地に建てられた家屋からも容易にその繁栄ぶりが想像できる。ベンガラで着色された赤い外壁、なまこ壁。靴を脱いで、内に上がらせてもらうと、畳の部屋はいくつも続き、廊下は迷路のように曲がっている。黒光りしている床は僕の歩幅に合わせて心地よくきしむ。それにしても寒い、足先が冷える。雨脚はどうだろうか?曇ったガラス窓から中庭を覗くと、そこにはベンガラにも負けない赤いモミジが目に飛び込んできた。

吹屋(了)


OLYMPUS OM-D EM-1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mmF2.8 PRO

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